三尾隧道 みお 旧 一般県道三尾浜坂線
兵庫県美方郡新温泉町(浜坂町)
延長 235.0m  
幅員 2.60m  
竣工  1950年  

神功皇后が濃霧の中たどり着いたという但馬御火浦(たじまみほのうら)の三尾地区。集落の右も左も裏側も険しい崖になっていて、戦後すぐまではこの集落から浜坂の町へ出るには徒歩で崖と呼んでいいほどの山を越えるか、船で出るしかなかった。

その三尾の浦へと抜ける山道には昭和25年に三尾の人々の日役もあってようやく隧道が開通した。昭和25年といえばすでに自動車交通が発達しつつあり、トラックでの輸送も当然のように行われていたころである。
その三尾隧道は台帳によると幅員2.6m有効高2.4m(車道幅員はなんと1.8m)であり、昭和50年代には一段低い位置に新たに1.5車線(新温泉町に言わせると2車線)のトンネルが建設された。

さて、現地はどのようになっているのだろうか。

浜坂方面から現三尾トンネルを抜けるとすぐのところに小さな広場があり、「御火乃浦に新しい道拓く」と彫られた開通記念碑が建っている。これは、新トンネルの開通記念碑であるがその開通記念碑の後ろに旧隧道が口をあけている。

藪の奥にあるわけでもなく、もちろんごみなどは捨てられていたりするのだが、あまりにあっさり、しかも封鎖も通行止め看板もない。しかし、いかにも廃隧道然とした旧隧道は新トンネルとの比較でその小ささがわかろうかと思う。

水没を覚悟して、長靴に履き替え進入を試みる。ロープが大量に放棄してあるほかは、心配された落石などもなく(しっかりコンクリート覆工されているせいもある。)路面のコンクリート舗装もしっかりしていて反対側の光もよく見える。
覆工は入り口付近だけで奥は素掘りのようにも見えたが、一部区間が吹きつけ施工してあるだけでほとんどの区間がきっちりとコンクリートで覆われている。しかも、思ったような漏水も少ないようで路面は乾いている。入り口付近のぬかるみとロープの山さえ何とかなれば車でも十分通り抜けできそうだ。
しかし、風が強いせいもあるのか「ぐぅぉん」「ひゅぉん」といった犬の鳴き声のような音が断続的に響いてくる。山犬なんて狼でなくてもごめんこうむりたいのでライトで遠くを照らしてみるが、動物の気配もない。

結局は、このコンクリートの板の向こうから音がしてくることが判明した。漏水か何かの音であろう。
隧道は浜坂側から三尾側へかなりの傾斜で一方的に下っている。天井には照明器具や架線もそのまま残っている。ライトが照明器具に当たって反射するので一瞬電気が生きているのかと思ったりもした。
浜坂側の坑口付近では小さなカーブ(食い違い?)が生じているほか、坑口から山水も流れ込んでくるようになる。

また、ほとんど唯一の通行障害として倒木が一本坑口の前に倒れ掛かってきている。
浜坂側の坑口は、現道から急傾斜で一直線に上がってきていて、隧道の手前が峠のサミットとなっている。山は植林されており旧道にはうっすら轍のあとさえ残っている。

しかし、隧道から三尾の浦までは鵯越もかくやといった急勾配で落ち込んでおり、車道はいくつものヘアピンカーブを繰り返してようやく集落までたどり着くのである。
新トンネルが完成してから25年以上が経っているが、隧道の三尾側には「三尾口」というバス停もあったりして、歩道として山や山の畑への通作、あるいは通学にもしばらくは使われたりしていたのかもしれない。
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