上組隧道 かみぐみ 町道白水大久保線
広島県豊田郡大崎上島町
延長 55.0m  
幅員 1.90m  
竣工 1929年5月  

大崎上島旧東野町の山中,役場のある白水地区から狭い谷を上ってゆく。そこは小さな谷が入り組んでそのすべてがみかん畑である。
きれいに手入れされたみかん畑とコンクリート農道が谷を上り詰めたところに,地域の住民の手作り隧道がある。割石とレンガとコンクリートで補強されたそれは,普通車では通り抜けが不可能な大きさしか持たないが,まわりのみかん畑同様きれいに整備されて現役で使われている。
 

以下は,農作業されていた地元の方に聞いた話。

◇大正生まれの人に小さいころ親に負われて通ったという話を聞いたことがあるから,できたのは大正くらいではないか。(石版によると昭和4年5月)

◇図面もなしに両端から手作業で掘り進め,真ん中で貫通したときには,建設に携わった人たちはほんとうに大喜びだったという。その当時生まれた人たちでももう80歳に近い。当時を知っている人も少なくなった。

◇狭いので軽トラックがぎりぎりでミラーをこすることもある。新しい車は幅が広いのでお年寄りは今乗っている古い車がつかえなくなったら農作業にこられなくなる。いまでも,トンネルの向こうに車を止めて畑に来る人もある。

◇新しい農道もほしいけれど,その時でもトンネルは残したい。

先人の残した遺産として考えられているようで,これからも美しいみかん畑とトンネルは集落の方々の手によって守ってゆかれると思うし,そう願っている。
入り口の壁には工事に携わった人たちの名前や寄付金額が彫られた石が埋め込まれている。
レンガの積み方も乱雑だし,決して近代土木遺産とかそういう類のものではないが,ひとつひとつレンガと割石を積んで作った手作り感あふれるトンネルだ。
位置

 
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